中村信仁 公式ウェブサイト
心が技術を越えない限り、決して技術は生かされない。

ここが一番だー !!

福岡から熊本へと旅は続く。
しかしこの夏は暑い……。
また、九州は暑過ぎる。
旅をしていると色々な人に出会うものだ。
居そうもないような人が居たりする。
だが、これまでの経験から、連続して出会うことは稀だった。
それがなんと、そんな稀有なことが熊本で起こった。

まずそれはホテルマンとの出会いから始まった。
仕事を終えホテルにチェックイン。
案内されると緊張する質なので、カードキーを受取り一人エレベーターで部屋へと向かった。
入った瞬間、煙草臭い。
一瞬気のせいかと思ったが、やはり煙草臭い。普通に喫煙の部屋と変わらない状態……。
あれっと思い内線電話でフロントに確認した。
「禁煙のお部屋で間違いございません」とそして慇懃無礼な対応は続く。
「お部屋の状態をを確認に、係りの者を伺わせます」
さすが名の通ったホテル。素早い対応に感動して待つこと五分。
そこに一人のホテルマンがやってきた。しかし、廊下に立ったまま、中の匂いを確認しようとしない。しかも「いったん外出してください」という。要はその間にオゾンの空気清浄機を回し、においを消すというのだ。
「えっ、出かけなきゃいけない?」
「そうしないと空気を入れ替えられません」
「まず匂いを確認するのが先じゃないの?」
「・・・・・・」
黒服を着て髪の毛は白髪交じりのオールバック。キャリアは長そう。しかし見た目の「デキる人」的な雰囲気と、発せられることばのギャップに苦笑いがこぼれた。
「煙草のにおいが苦手なので禁煙の部屋をお願いしました。案内された部屋が煙草臭かったら、まず部屋を変えるべきではありませんか。到着したばかりの、もしかしたら疲れているかもしれない旅人を、再び街中に放り出そうとする接客はいかがなものでしょう」
男は、舌打ちでもしそうな勢いで斜め下に顔をそむけた。要はすべてが面倒なようだ。たかだか煙草の匂いくらいでいちいちうるさい客だ、という態度。
仕方ないので、荷ほどきをしていなかったキャリーバックを手に部屋を出てチェックアウトにフロントへ向かった。
さすが名の通ったホテルだったので、フロントマンはものの数秒で事態を理解し、すぐに別の部屋を用意してくれました。
いやぁ、助かった。短気は損気。怒りを抱えたまま別のホテルを探さなくて済みました……。これにて一件落着、おもいきや、次なる出会いに続くんです。それは頑張る若者でした。

荷ほどきを終え、冷蔵庫から冷えたビールを取り出し、きゅーっと一機に飲み干したら、小腹が空いてきたので、なにか食べようかなと外へ。
しかしそこは土地鑑のない町、熊本。
ホテルからあまり遠くへ行くと迷子になるので、すぐ横の、地本の人たちが「かみ通り」と呼ぶアーケードの下をぶらぶら歩いてみた。
すると全国に展開する「CoCo壱番屋」の看板が!手頃でいいや、と中へ。
迷わずいつものエビメンチカツカレーを頼むも、出てきたのはメンチカツカレー。
エビはどこ……?
アルバイトらしき店員に訊ねると、伝票と商品を見比べ、間違いに気づいてくれた。
「すぐに作り直します」とカレー皿を手に二歩あるいたが、クルッと振り返りそのカレー皿をカウンターに座る私の前に戻した。
「このまま食べていて下さい」
「えっ?」
戸惑う私。
「これを!」
「なんで?」
「カレーが冷めるので」
「えっ、作り直してくれるんでしょう」
「はい、エビメンチカツを作ってきます」
「???」
「出来次第お持ちします」
「いやいや、ふつう全部作り直すでしょ」
「えっ、そうなんですか?」
もう笑うしかない。
このアルバイトの男の子は、オーダー間違いで出てきたメンチカツカレーをそのまま食べさせ、その間にトッピングのエビメンチカツだけを揚げて持ってこようとした。
なんともまぁ!
これが今年の夏の出来事だった。

でも、旅をしていると色んなことが起こります。
これはきっと今も昔も変わらないのでしょう。
だから「可愛い子には旅をさせろ」と先人は言ったのでしょう。
旅をすると、なんたって、人間に揉まれます。
揉みくちゃにされます。
そして、それが「じぶん」ていうものを磨いてくれるんでしょう。

 

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