中村信仁 公式ウェブサイト
心が技術を越えない限り、決して技術は生かされない。

つまみ喰いだけで味は分かるだろうか

母乳代わりに赤ちゃんに与える粉ミルク。日本では大正6(1917)年に初めて商品化されたそうだ。世界では1802(享和2)年にロシア人医師が考えついたらしい。

日本の大賀彊二(おおが きょうじ)氏が、たまたま実験器具に数滴の牛乳が固まってこびりついているのを見て粉末化を思いついたという。まだ外国製品が日本に入る前のことというのだから、それは完全なオリジナルだった。

思いつきは偶然からだったらしい。しかし……、記録には「偶然」と記されているが、大賀氏の頭の中に粉ミルクの必要性やなんらかの思いがなければ、そのこびりついた牛乳のかたまりは見逃されたはず。

大賀氏は林業関係の役所の元職員だったが、知人の紹介で和光堂薬局(現和光堂)の経営を引き継いで、株式会社和光堂の初代社長になる。和光堂といえばシッカロールだ。今の商品名はベビーパウダー。知らない人がいない商品。

大賀氏は幼児期に大変な貧困生活を経験していた。そして時代は乳幼児死亡率の高さや貧困家庭の乳幼児がおかれている状況はひどいものだった。世の中をよくしたいという思いが粉ミルクの発明につながったんじゃないだろうか。

日本という国は、いつの世も経営者の「世の中をよくしたい」という世間への思いが企業を発展させている。欧米企業と日本企業の違いはここにある。儲かる商売のつまみ喰いを繰り返し、M&Aに躍起になることが資本経済において「優秀な経営者」の代名詞のように云われるが、そんな風潮にそろそろ終止符を打つべきじゃないだろうか。

ルノーは日産をつまみ喰いして大きなしっぺ返しをくらった。フランスを代表する経営者を犯罪の道へ走らせた。

実は……営業の世界も自分の数字ばかり追う営業人は、結局いつも苦しんでいる。「お客様の数字」という概念がない。お客様の数字とは顧客の利益をいう。とても簡単なこと。お客様に儲けてもらうにはどうすべきか、そこに思考が向くかだけ。たったそれだけのことなんだ。

 

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