中村信仁 公式ウェブサイト
心が技術を越えない限り、決して技術は生かされない。

とっさのひとこと

昨日、青い制服の運送会社の青年が仕事部屋へ荷物を届けてくれた。
炭酸水2ケース。
とても重たい荷物を届けてくれた。
受け取りにサインを求められ、ペンありますか、とたずねたとろ、その青年はポケットのあっちこっちをまさぐり「すみません、ペンを忘れました」と。

私は一旦、玄関先から部屋へ戻りペンをとってきた。
そのペンは過日泊まったホテルの宣伝用のペンで、パッと見少しだけ高級そうに見える。
ノック式ではなく、廻してペン先を出すタイプ。

玄関先でそのペンを使ってサインをし、受け取りを戻すときに、「よかったらどうぞ、ペンを忘れたのなら、次の配達先で困るでしょ」とそのペンを受け取りと一緒に渡した。

青年は一瞬、「いえっ、そんな」という顔をしたが、「どうぞ、遠慮なく」と笑顔で渡すと、ニコッとして「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」と。

そのことばに驚いた。
とっさの場面で「大切に……」ということばを使った青年。
普通なかなか出てこないんじゃないでしょうか、「大切に……」というセリフは。

きっとこの青年は普段からこのようなことばを使っているのではないか。
とても素敵な人だ。

ペンがないと困るだろうな……、と思った私の行為に対して、その行為をはるかに上回る対応を返され、私は逆に嬉しくなった。私は幸せな気持ちになった。そして何より私は勉強させられた。

とっさに、こんな粋なセリフを吐けるだろうか。
とっさに、相手の気持ちを鷲掴みすることばが出てくるだろうか。

青年よ、恐るべし !!
できることなら、また会おう !!

 

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